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Dr.脇坂 VOL.05
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パーキンソン病は、脳の「黒質」という部分にあるドパミン神経細胞が徐々に減少することで起こる進行性の神経疾患です。
ドパミンは、身体の動きを滑らかに調整する重要な神経伝達物質です。この物質が不足すると、
といった症状が現れます。
日本では高齢化とともに患者数が増加しており、決して珍しい病気ではありません。
現在の治療の中心は、L-ドパ製剤(一般名:レボドパ・カルビドパ/ベンセラジド)などの薬物療法です。
多くの患者さんで症状のコントロールは可能ですが、神経細胞そのものの減少を止める治療はまだ確立されていません。
そのため、「神経を補う」「神経を再生させる」治療が長年模索されてきました。
今回了承されたのは、以下の2製品です。
今回承認が了承された製品は、患者さんご自身の細胞から作製したものではありません。
京都大学iPS細胞研究財団があらかじめ作製・備蓄している「第三者由来」のiPS細胞をもとに製造されています。
これは非常に重要なポイントです。
第三者由来とすることで、細胞の品質を一定に保つことができ、製造工程の標準化も可能になります。
また、必要なときに速やかに供給できる体制を整えやすいという利点もあります。
もし患者さんごとに細胞を作る方法であれば、時間もコストも大きくかかります。
実用化を見据えた場合、第三者由来という選択は現実的な判断といえるでしょう。
一方で、他人由来の細胞である以上、免疫反応の問題や、長期的な安全性については今後も慎重な評価が必要です。
再生医療は大きな可能性を持っていますが、同時に「長期で見てどうか」という視点が非常に重要です。
今回の承認は大きな一歩ですが、ここからが本当の意味での検証の積み重ねになります。

今回の専門家部会での了承は、一定の条件下において安全性と有効性が確認された、という段階を意味します。
ただし、これは「誰でもすぐに受けられる治療になった」ということではありません。
想定されている対象は限られた症例であり、実施できるのも高度な設備と経験を持つ専門医療機関に限定される見込みです。
また、長期的な経過観察が前提となるため、慎重な管理体制のもとで行われる治療になります。
さらに、製造工程の特殊性や管理体制を考えると、高額医療となる可能性も否定できません。
再生医療は大きな希望である一方で、実用化とは「段階的に広がっていくもの」です。
全国どこでも一般診療として受けられるようになるまでには、症例の蓄積と長期データの検証が必要であり、数年から10年単位の時間がかかると考えるのが現実的です。
現在のパーキンソン病治療の中心は、適切な薬物療法の継続です。
L-ドパをはじめとする薬剤は、症状を安定させ、日常生活を維持するために非常に重要な役割を果たしています。
加えて、継続的なリハビリテーションも欠かせません。
身体を動かし続けることは、運動機能の維持だけでなく、転倒予防や生活の質の向上にも直結します。
さらに大切なのは、生活機能をできる限り保つことです。
食事、歩行、会話、社会との関わりといった日常の積み重ねが、将来の状態を大きく左右します。
今回の承認は、日本の再生医療にとって歴史的な一歩です。
iPS細胞を用いた治療が現実の医療として動き始めたことには、大きな意味があります。
一方で、現実は少し分けて考える必要があります。
パーキンソン病では、早期からの適切な治療継続が何より重要です。
症状を安定させ、身体機能を維持し、将来の選択肢を広げていくことが基本になります。
当院では、標準治療を大切にしながら、再生医療の考え方を取り入れたアプローチもご提案しています。
iPS細胞治療のような神経置換医療とは位置づけが異なりますが、間葉系幹細胞や幹細胞培養上清液を用いた再生医療とリハビリテーションを組み合わせることで、神経を取り巻く環境に働きかけるという考え方です。
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