医療の最前線から学ぶ専門情報ブログ
〜医師の視点でお届けする健康ケアお役立ち情報〜
Dr.脇坂 VOL.01
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「最近、物忘れが増えた」「人の名前が出てこない」「なんだか集中できない」。
そんなことありませんか?
そんな変化を、冬になると特に強く感じる方が増えています。
それは、年齢や寒さのせいだけではなく、季節に関わる体内環境の変化が脳の血流や神経伝達に影響しているのかもしれません。
気温が下がると血管が収縮し脳への血流が減少、脳の働きが鈍って、記憶・判断・感情のバランスが一時的に崩れ、「言葉が出にくい」「段取りが苦手になった」と感じることもあります。
特に中高年層では、これがMCI(軽度認知障害)やアルツハイマー病の初期兆候と重なる場合があるので、「ちょっとおかしい」と感じたら放置しないで医療機関を受診してみた方がよいでしょう。

寒さで血管が収縮し血流が低下すると、脳への酸素と栄養の供給が減り、脳機能が一時的に鈍ることがあります。
特に前頭葉や海馬は血流低下の影響を受けやすく、記憶力や判断力の不調を感じることがあります。
気温の低下に伴い体温が下がると神経伝達のスピードが遅くなり、言葉が出にくい、判断が遅い、注意力が続かないといった状態が起こりやすくなります。
日照時間が減ると脳で分泌されるセロトニンが減少し、気分の落ち込みや意欲の低下が起こります。
寒冷刺激は交感神経を優位にするため、睡眠の質の低下をまねき脳疲労から回復しにくくなります。
寒さで身体が冷えると脳への血液供給が減少。
高齢者は動脈硬化の影響で血流調整が難しく、脳も軽度の低酸素状態に陥りやすい傾向があります。
寒さで外出を控えると会話や刺激が減り、脳への入力が減少します。
人と話すことや出かけること自体が脳のリハビリになるため、活動量の低下は認知機能の低下リスクを高めます。
冬は日照時間が短く体内時計が乱れるため、睡眠に影響します。
睡眠の質が低下すると、脳の老廃物を排出する機能が働かず、アルツハイマー型認知症の原因のアミロイドβペプチドが脳に蓄積しやすくなります。

MCI(Mild Cognitive Impairment:軽度認知障害)は、認知症の前段階にあたる状態です。
「まだ日常生活に支障はないけれど、以前より物忘れが増えた」「仕事や家事の段取りが難しくなった」といった軽度の変化が見られる時期を指します。
MCIの約10〜15%は1年以内に認知症へ進行します。
しかし、早期に発見し対策を行えば進行を抑えられる可能性があるのです。
次の項目のうち、いくつ当てはまりますか?
約束や予定をよく忘れる
財布や鍵の置き場所を思い出せない
計算や買い物に時間がかかる
同じ話を何度もする
趣味への関心が減った
気分が落ち込みやすい
冬になるとやる気が出ない
3つ以上当てはまる場合は、MCIやアルツハイマー型認知症のリスク評価を受けることをおすすめします。
寒さによって血流が悪くなり、脳への酸素や栄養の巡りが滞ると、記憶力や集中力が落ちます。
しかし、日々の生活習慣を少し整えるだけで、脳の働きを守ることは可能です。
脳の健康を保つために大切なのは、「体温」「食事」「運動」「睡眠」という、誰でも実践できる基本的な4つの習慣。
ここでは、今日から始められる簡単なセルフケアをご紹介します。
首・手首・足首の「3つの首」を冷やさないよう意識しましょう。
3つの首では比較的大きな血管が皮膚近くを走っているため、首・手首・足首を保温すると身体全体を効率よく温められます。
DHAやEPA(青魚)、抗酸化物質(ナッツ類・緑茶)、脳の代謝を助けるビタミンB1・B6・B12は、冬の神経機能を保つために欠かせません。
日々の食事に、豚肉、納豆、魚、卵を意識的に取り入れましょう。
1日20分程度のウォーキングやストレッチでも、前頭葉が刺激され、記憶や判断力をつかさどる神経ネットワークが活性化します。
運動によって脳の血流が改善されるだけでなく、筋肉が刺激されてBDNF(脳由来神経栄養因子)という物質が誘導されるため、脳の神経細胞の成長が促されて、認知機能の維持や改善につながります。
朝日を浴びて体内時計をリセットし、夜は照明を落として、寝る1時間前にはスマホを手放し、ゆったりとして副交感神経を優位にしていきます。
良質な睡眠は、日中に使われた脳を休め、脳の老廃物取り除く大切な時間になります。

Dクリニック東京では、脳科学に基づいたMCI・アルツハイマーリスク診断ドックを実施しています。
頭部MRIによる画像診断、認知機能検査、脳脊髄液中のアミロイドβとタウたんぱくの測定を組み合わせて、将来的なアルツハイマー病発症リスクをどこよりも早い時点で可視化します。
MCI・アルツハイマーリスク診断ドックなら、認知症の70%ほどを占めるアルツハイマー病を、認知症発症の20年前から予測可能です。
認知症は、症状が出てから治療を始めるのではなく、症状を自覚する前に自身の状態を把握して予防することが重要です。
日頃の生活習慣を整えることで、認知症のリスクを下げられる可能性があるのですから、身体の人間ドックだけでなく、将来の認知症の可能性を調べるドックが必要なのです。
Dクリニック東京では、大学の脳外科学教室と連動し最先端の医学に基づいて、認知症のリスクを視覚化し、脳の健康を保つための食事・運動・睡眠・栄養指導を行います。
冬の変化が、気付かないうちに脳の働きにも影響を及ぼします。
けれども、知ったその時から、脳の健康づくりは始められます。
「最近、もの忘れが増えた」「名前がすぐに出てこない」そう感じたら、まずは、生活のリズムを少し整えてください。
医療のサポートを受ければ、脳の機能はきちんと守っていくことができます。
これからの季節、心と身体、そして脳をいたわる時間を、どうぞ大切にしてください。
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