医療の最前線から学ぶ専門情報ブログ
〜医師の視点でお届けする健康ケアお役立ち情報〜
Dr.脇坂 VOL.10
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年齢とともに身体に変化が起こることは、自然な現象です。
しかし、その変化を「仕方がない」と受け流すのか、「整えられる部分は整えていく」と考えるのかで、その後の人生の質は大きく変わります。
今回は、医師の立場から“老化”をどう捉え、どう付き合っていくべきかについてお話しします。
年齢を重ねると、多くの方が次のような変化を感じます。
若いころは多少の無理をしても、数日休めば元に戻ることができました。
しかし40代、50代と進むにつれ、「回復力そのもの」が少しずつ変わっていきます。
ここで大切なのは、これを“衰え”と悲観するのではなく、「身体の使い方を見直すサイン」と捉えることです。
身体は正直です。無理を重ねれば不調として表れますし、丁寧に整えれば、それに応えてくれます。
年齢による変化は特別なことではありません。むしろ、誰にでも起こる変化なのです。

医療の視点で見ると、老化を「自然現象」と見るか、「病気」としてみるか、意見が分かれるところです。
多くの場合、「老化」は何かが壊れるというよりも、「機能の効率が落ちていく」現象です。
たとえば心臓や肺が突然壊れるわけではありませんが、同じ運動をしても息が上がりやすくなったり、同じ量の仕事をしても、疲労が残りやすくなったりします。
これは性能の低下といえるでしょう。
特に影響を受けやすいのが、身体の中でエネルギーをつくる仕組みです。
私たちの身体は常にエネルギーを消費していますが、呼吸や思考、筋肉の動き、内臓の働きなど、そのすべてがエネルギーによって支えられています。
このエネルギー産生の効率が少しずつ落ちることが、疲れやすさや回復の遅さとして表面化してくるのです。
私たちの細胞の中には「ミトコンドリア」と呼ばれる小さな器官があります。
ここは、いわばエネルギー工場のような存在です。
ミトコンドリアが十分に働いているとき、身体は効率よくエネルギーを生み出し、活動的でいられます。
しかし加齢とともに、その働きは少しずつ低下します。
さらに影響するのが「酸化ストレス」です。
呼吸によって生まれる活性酸素や、生活習慣の乱れ、慢性的な炎症などが重なると、細胞はダメージを受けます。
その結果、
といった症状が現れやすくなります。
こうした細胞レベルの変化は避けられないものです。
しかし、そのスピードや影響の大きさは、生活習慣や医療的なアプローチによって変えることができます。
では具体的にどのように整えていくのか、その医療的アプローチについてお話しします。

医療に対して、「若返らせてほしい」という期待を抱かれる方も少なくありません。
実際に近年の老化研究は急速に進んでいます。
たとえば、ハーバード大学のデビッド・シンクレア教授らは、老化を“治療可能な現象”として捉え、将来的には老化の進行を遅らせたり、場合によっては巻き戻すことができる可能性を示唆しています。
いわゆる「寿命脱出速度」という概念も提唱され、医学の進歩が老化の進行を上回る時代が来るのではないか、という議論もあります。
さらに、老化した細胞(セノリティクス:いわゆる“老化細胞”の除去)に関する研究では、動物実験レベルで機能改善が確認されています。
また、山中伸弥教授が発見した「山中因子」を応用し、細胞を若い状態に初期化する研究も進んでいます。
将来的には、生物学的年齢そのものを若返らせる医療が実用化する可能性も否定できません。
しかし、「未来の若返り医療」は確かに研究が進んでいますが、いま私たちが日常診療で提供できる段階にはまだ至っていない、というのが現実です。
現時点での医療は、まだ、老化そのものを止めることはできるとは言い切れませんが、老化によって生じる負担を軽くすることは可能です。
ひとつは、疲労回復を助ける成分を補う点滴療法です。
たとえば、グルタチオンを含む点滴は、体内の抗酸化環境を整え、細胞が受ける酸化ストレスを軽減することを目的としています。(当院では疲労回復点滴として提供)
グルタチオンはもともと身体の中に存在する成分ですが、加齢やストレスによって減少しやすいことが知られています。これを補うことで、エネルギー産生の効率を支える環境づくりを目指します。
また、男性の場合はホルモンバランスの変化も無視できません。
年齢とともにテストステロンが低下すると、筋力や意欲、集中力にもマイナスの影響が出やすくなります。
当院では、テストステロン補充療法についてもご相談いただけます。
ただし、基本となるのは、やはり生活習慣です。
これらは、ミトコンドリアの働きを支え、炎症や酸化ストレスを抑える土台になります。
しかし、忙しい現代社会では、理想的な生活を完璧に維持することは簡単ではありません。
仕事の責任、家庭の役割、社会的な立場。特に40代以降は、身体にかかる負担が大きくなる時期です。
そこで、「生活習慣で足りない部分を医療で補う」という考え方も必要になります。
生活習慣を整えたうえで、不足している栄養素やホルモン環境を医療でサポートする。
この両輪があってこそ、無理のない健康維持が可能になります。
年齢を重ねることは、決して悪いことではありません。
経験や知恵は増え、人生の深みも増していきます。
大切なのは、
• 老化を否定しないこと
• 若い頃と同じ無理をしないこと
• 疲れを溜め込まない選択をすること
身体の変化を「衰え」として諦めるのではなく、「整え方を変える時期」と受け止める。
それが、これからの時代の健康観だと私は考えています。
年齢による変化は避けられません。しかし、その中でどう過ごすかは選ぶことができます。
無理を重ねるのではなく、今の身体に合った方法で整えていく。
その選択肢のひとつとして、医療があります。
気になる変化や治療があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
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