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Dr.近藤 VOL.09

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認知症は物忘れだけではない|脳神経外科医が解説する「認知症の7つの定義」

認知症というと「物忘れの病気」という印象を持つ方が多いかもしれません。
しかし実際には、認知症は単なる記憶の問題だけではありません。

私たちの脳には、記憶だけでなく、注意力や言葉を使う力、行動を計画する力、人の気持ちを理解する力など、日常生活を支えるさまざまな認知機能があります。
認知症とは、こうした認知機能のうちの複数が持続的に低下することで、生活に影響が生じる状態を指します。

今回は、認知症にかかわる7つの認知機能について、順番にわかりやすくお話ししたいと思います。


認知症の定義は「7つの認知機能」の変化

「認知」という言葉は実はさまざまな意味を持っています。
しかし病気としての認知症は、医学的には次の7つの認知機能の変化として定義されています。

・複雑性注意
・記憶
・言語
・遂行機能
・視空間認知
・行為
・社会的認知

これらはすべて、私たちが日常生活を送るうえで欠かすことのできない脳の働きです。
それでは、それぞれの認知機能について、順番に見ていきましょう。


複雑性注意

複雑性注意は、私たちは普段、さまざまな情報を同時に受け取りながら生活しています。

例えば

・周囲の音
・視覚から入る情報
・周りの人との関係
・その場の状況

といった多くの情報です。
こうした情報を同時に処理して、「自分はどう行動すればいいのか」を判断する能力。
これが複雑性注意です。
認知症では、このように複数の情報を同時に処理し、状況に合わせて行動を判断することが少しずつ難しくなってくることがあります。


記憶

次は記憶です。記憶は皆さんもよくご存知のように短期記憶、長期記憶の二つに分けられます。
短期記憶とは、先ほど考えていたことや覚えていたことを思い出す能力です。

例えば

・今日の朝ごはん
・先ほど誰とどんな話をしていたか

といった比較的最近の出来事です。
一方で長期記憶は、昔の出来事を思い出す記憶になります。
認知症では、この短期記憶が低下することが多いことが知られています。
特に、最近の出来事を思い出すことが難しくなることが特徴のひとつとされています。


言語

次は言語です。
言語というと「言葉を思い出せるかどうか」と考える方も多いのですが、実際にはそれだけではありません。
むしろどのように言葉を使って会話をするかということが中心になります。

例えば

・言葉をうまく使えるか
・会話がスムーズに続くか
・話の流れが保てるか

といったことです。
単語が思い出せない場合、それを記憶の問題として捉えることもありますが、一方で言語機能の障害として考えることもあります。
こうした言語の働きも、認知機能の重要な一つです。


遂行機能

次は 遂行機能です。
遂行機能とは、簡単に言うと行動を計画して、その通りに実行する能力です。

例えば

・一日の行動を考える
・どの順番で物事を進めるか判断する

といったことです。
私たちは朝起きたときに「今日は何をしよう」「まずこれをして、そのあとにこれをしよう」
と自然に判断しています。
しかし認知症では、このような行動の計画や実行が難しくなることがあります。
これも認知症のサインの一つと考えられています。


視空間認知

次に視空間認知です。
視空間認知とは、簡単に言うと「地図を正しく理解する力」と考えると分かりやすいかもしれません。
実際には、周囲から入ってくるさまざまな情報、
例えば北や南といった方向、建物の位置、駅や目印などをもとに、自分がどこにいるのか、どのように移動すればよいのかを判断する能力です。
私たちは普段、こうした情報を自然に処理して、道に迷わず目的地にたどり着くことができます。
しかし認知症では、こうした空間の情報を理解したり判断したりすることが難しくなることがあります。
そのため、いつも行っている場所なのに帰り道がわからなくなったり、地図を見ても自分の位置がわからなくなったりすることがあります。


行為

次に行為です。
行為とは、簡単に言うと「道具を正しく使って行動する能力」を指します。
例えば歯ブラシを見れば、私たちはそれを使って歯を磨くものだと自然に理解し、その通りに行動することができます。
しかし認知症では、目の前の道具を見ても、それをどのように使えばよいのか判断することが難しくなることがあります。
そのため、歯ブラシの使い方がわからなくなったり、櫛やブラシをどのように使えばよいのか分からなくなったりすることがあります。
このような日常的な道具の使い方の変化から、認知機能の低下に気づかれることも少なくありません。


社会的認知

最後に社会的認知です。
社会的認知とは、相手がどのように感じているのか、どのような考えを持っているのかを推測し、それに合わせて行動する能力のことを指します。
例えば、家族が困っている様子を見たときに「何か手伝ったほうがよいのではないか」と感じることは、多くの方にとって自然なことです。
しかし認知症では、このように相手の気持ちや状況を読み取ることが少し難しくなることがあります。
その結果、社会のルールを守ることが難しくなったり、ゴミの日を間違えてしまったりといった行動につながることもあります。
こうした変化は、決してご本人がわがままになったわけではありません。
病気によって、相手の気持ちを理解する力が低下している状態なのです。
これが 社会的認知の障害と呼ばれるものです。

ここまでで7つの認知機能の説明になります。


認知症になったらどうすればよいか

それでは、認知症になったらどうすればよいのでしょうか。
まず思い浮かぶのは「医療機関を受診すること」だと思います。
もちろんそれはとても大切です。
ただ、皆さんもご存じのように、現在の医療ではすべてを解決できる特効薬があるわけではありません。
そのため、「運動がいいのではないか」「音楽を聴かせたらいいのではないか」「趣味を続けた方がいいのではないか」といったさまざまな意見を耳にすることがあると思います。

実は、こうした方法の中には 医学的にも一定の根拠が示されているものがあります。
ここからは、認知症に対して日常生活の中で取り入れられる方法についてお話ししていきたいと思います。


医学的に最も根拠があるのは「運動」

認知症に効果がある日常生活の中で、医学的に最も根拠があるとされているのが運動療法です。
特に推奨されているのは 有酸素運動です。
有酸素運動は、認知症の症状改善だけでなく、認知症の予防効果もあるとされています。
では、有酸素運動とは何でしょうか。簡単に言うと歩くことです。
目安としては

・1日40分程度
・6000歩〜8000歩

と言われています。
実際にやってみると、これはなかなか簡単なことではありません。
しかしながら、現時点で 医学的に最も根拠がある方法の一つとされています。


作業療法(趣味や日常活動)

次に作業療法についてです。
例えば

・手芸
・裁縫
・料理
・園芸
・絵画
・塗り絵
・買い物

といった活動です。
ご家族の中には、「何かやった方がいいのではないか」と思って、こうした活動を無理に勧めてしまうこともあるかもしれません。
しかし医学的には、これらの活動が単独でどの程度認知症を改善させるのかは明確には分かっていません。
ただし、もしそれがご本人の好きな趣味である場合は話が変わります。
自分が好きなことをすることで

・生活に楽しみが生まれる
・人とコミュニケーションが生まれる

といった効果が期待できます。
そのため、ご本人が楽しめる活動であれば、ぜひ続けていただきたいと思います。


学習療法

次に学習療法です。
例えば

・計算問題
・漢字ドリル

といった、小学校の学習のようなトレーニングを行う方法です。
医学的研究では、こうした学習によって短期的な改善効果が見られることが知られています。
しかし残念ながら、長期的に認知症の進行を完全に止めることはできないとされています。

一方で、認知症の進行のスピードをゆるやかにする可能性があることも報告されています。
そのため、無理のない範囲で取り組める環境があり、落ち着いた雰囲気の中で続けられるのであれば、日常生活の中に取り入れてみるのも一つの方法といえるでしょう。


栄養療法

食事についても、多くの情報がインターネットに出ています。
「この食べ物が認知症に良い」「この栄養が認知症を防ぐ」といった情報を見かけることもあると思います。
しかし残念ながら、特定の食べ物が認知症を予防するという医学的証拠は現在のところありません。
ただし、食事をすることや家族と一緒に食事をすること。こうした行為そのものはとても重要です。
食事の時間は、生活リズムを整えたり、コミュニケーションを生む大切な時間でもあります。


音楽療法

音楽療法についても、近年再び注目されています。
音楽療法には

・歌う
・音楽を聴く
・楽器を演奏する
・音楽に合わせて体を動かす

といった方法があります。
認知症そのものを治療するという意味では、明確な医学的エビデンスはまだ十分ではありません。
しかし研究では、気持ちが安定したり心のゆとりが生まれたり、うつ状態が改善するといった効果が知られています。
つまり、認知症によって生じる気分の落ち込みや元気のなさに対しては効果が期待できます。
そのため、昔から音楽が好きだった方には、ぜひ取り入れてみていただきたいと思います。


回想法

もう一つ、回想法という治療があります。
回想法というのは、テーマを決めて過去の思い出を語り合うミーティング形式の治療です。
例えば

・昔の写真
・若い頃の思い出
・昔の音楽

などをきっかけに、グループで会話をしていく方法です。
映画やドラマなどで、カウンセリングのような形で集団で話し合う場面を見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。
ただし、認知症の方は過去を思い出すこと自体が難しくなっている場合も多く、回想法を単独の治療として行うことは少し難しいとされています。
そのため医学的には運動や軽い作業、日常活動などと組み合わせて行うことが勧められています。


精神的支持療法

最後に精神的支持療法です。
精神的支持療法というのは、簡単に言うと不安を取り除くように支えてあげることです。
ただ、ここでとても大切なことがあります。
実際にこの精神的支持を行うことができるのは、医療者ではなくご家族や、日常的にそばにいる介護の方々であることが多いのです。
長い時間を共に過ごしてきたお父様やお母様、おじいさま、おばあさまが、だんだんと自分のことを認識しなくなっていく。
その状況の中で介護を続けることは、ご家族にとっても非常につらい経験です。
しかし、認知症という病気を理解することで

・なぜこのような行動が起きるのか
・ご本人はどのように感じているのか
・どのような関わり方が良いのか

といったことが少しずつ見えてきます。それが結果として、患者さんご本人にとっても大きな精神的な支えになります。


まとめ:認知症は「物忘れだけの病気ではない」

認知症のケアは、特別な治療だけで成り立つものではありません。
・運動
・日常生活
・趣味
・家族との関わり
こうした生活の積み重ねが、脳の健康や生活の質を支えます。
また、認知症は単なる「物忘れ」ではなく、脳のさまざまな働きが関係する状態です。
そのため、早い段階で脳の状態を知り、適切に向き合うことがとても重要になります。

DクリニックではMCI(軽度認知障害)やアルツハイマー病のリスクを早期に評価する検査を行っています。
認知症は、症状が進行してから治療を始めるよりも、早い段階で脳の状態を把握することが重要とされています。
「最近物忘れが増えた気がする」「家族の認知機能が少し気になる」そのような場合には、脳の状態を一度確認してみることも選択肢の一つです。
ご自身やご家族の将来の健康のために、早期のチェックを検討してみてください。

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