理事長の呟き
〜アンチエイジング医療に邁進する精神科医のひとり言〜
Vol.78
暦の上では春になりました。新年を迎えて1ヶ月以上経過しているのにコラムの更新がないのは、「これは小林が体調でも崩して大変なことになっているのではないか?」とご心配頂いた方が“ひょっとして”いらっしゃいましたら、大変申し訳ございませんでした。これっぽっちも心配なんてしておられない方々が大半かと思いますが、おかげさまで体調を崩すこともなく今のところは元気に2025年を過ごしております。
ただ、なんと申しますか、新しい年に大きな目標でも掲げて大風呂敷でも広げてやろうといった意気込みにはなれなかったというのが正直なところではございます。昨年のように年明けから大きな震災や大きな事故が勃発するような大事はなく、まあ何となく青学が箱根駅伝を連覇して、ゆるっと2025年がスタートした感じではございましたが・・・。
そこでアメリカの大統領がトランプさんになって、一体何を言い出して、のっけから何をしでかしてくれるのか、そして石破首相が施政方針演説で何を宣言するのか、そこいらにコラムのヒントを頂戴しましょうと思っていたら、これがものの見事に肩透かしを食らって私自身がアレルギー反応を呈してしまい、コラム執筆の意欲を削がれてしまったというわけでございます。
トランプ大統領はカナダやメキシコや中国に法外な関税をちらつかせて、相手がビビって何か動きを見せたところで、振り上げた拳を一旦下ろして様子をうかがうという、まさに暴力的自由業(=反社)の方々が行うような手口そのもので大統領活動を開始しました。一方の石破首相は『楽しい日本』をスローガンに今後の政治運営を行うと宣言されました。これにはまさにアレルギー反応炸裂といった感じでございます。
皆さんも良く御存じの通り、「楽しくなければテレビじゃない!!」と言っていたお台場のテレビ局が、見るも無残な大炎上を来しているときに、『楽しい日本』なんて、よくまあ言えたものだと私自身は聞いた瞬間に腰砕けになってしまいました。首相の周りにはそのあたりを事前にサポートしてくれるようなブレインと言いますか知恵者はいらっしゃらないのでしょうか?今年1年どれだけ日本が楽しくなるのか見ものでございます。
そんな年明け早々からスギ花粉は東京では観測史上最も早く1月8日に飛散開始が確認されました。これも地球温暖化の影響なのか、何となく年々早くなっているような気がします。私はこのコラムでも申し上げておりますが、結婚したその年にスギ花粉症を発症して現在に至っておりますが、ここ数年何となく症状がマイルドになってきているようなのでございます。目が痒くなるのも、鼻水の出る量も、30代~40代の頃と比較して明らかに軽症化しております。
花粉症とはご承知の通りアレルギー反応ですから、スギ花粉というアレルゲンに対してそれを体内に取り込んだ結果として身体がアレルギー反応を呈するわけで、アレルゲンが減ってこない限り反応は変わらないはずですが、ここ数年の猛暑でスギ花粉はむしろ年々増えているように聞いています。つまりこれは私自身のアレルギー反応が弱くなったと言いますか、鈍くなっているという結果なのでしょうか?つまりこれは改善したというよりも、『打っても響かない』という所謂『どんくさいおっさん』になって来ていると考えた方がよさそうな気がしてきております。
我々の博多のクリニックの初代院長を務めて頂いた、九州大学皮膚科学名誉教授の中溝先生が、生前に「わしゃ~前立腺に癌があるけど、もう癌も歳を取って鈍~くなっとるけん、な~んも治療もせんでよか」とおっしゃって放置されて、当時90歳を超えても私と一緒に博多の中州で、私と同じ位飲み食いされていたことを思い出します。結局最後は前立腺癌でお亡くなりにはならなかったので、先生の言われたとおりにそれが正解であったという事なのでしょう。
私達は1999年からアンチエイジングをクリニックの中心において診療を継続して参りました。日本人の平均寿命(2023年で男性:81.09歳、女性:87.14歳)はまだ延びておりますが、我々が目指すところはその部分ではなく、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」とされる『健康寿命』(2019年では男性:72.68歳、女性:75.38歳)をいかに引き上げるかが1番の使命と考えております。
介護をしてくださる方に車いすを押してもらって、耳元で大きな声で「小林さぁぁぁん、桜の花が満開ですよ~~~」と叫ばれながら花見に行くよりも、自分の足で桜の木まで歩いて行って、自分の目でその桜の満開を確認して、そこに寄って来る小鳥のさえずりをしっかりと聞き取れる方がやはり理想ではないでしょうか。
今現在我が国の医療が抱える問題点の1つに、この健康寿命と平均寿命の差をいかにして縮めていけるかという点があるのです。皆さんが平均寿命以上までお元気にお達者で、その後にピンピンコロリというのが、我が国の今後の医療費を最も削減できる理想的なパターンと言えます。
“アンチエイジング”は日本では“抗加齢”と訳されてしまいますが、何も全ての老いや疾病に100%抗う必要はないわけで、そのあたりとけんかをせず(過剰に反応するのではなく)に仲良く(ちょっとどんくさい位の間柄で)一緒に過ごせることが出来れば、健康寿命を平均寿命に近づけることが出来るはずだと思う2025年最初の呟きでした。
只今炎上中のお台場の放送局で「1番のお偉いさん」と目されている方は、ここ(健康寿命=平均寿命)を目指していらっしゃるのではないかと類推いたします。しかしもう平均寿命も十分超えておられるのですから、きれいな幕引きをされては如何かと感じてしまいますが、さてご本人はどのように思っておられるのでしょうか?
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