『金木犀の香り』

自宅から最寄りの駅までの道のりで、毎年今頃には香ってくるはずの金木犀が今年はその香りを漂わせてはくれません。これも今夏の酷暑続きの影響なのでしょうか？全国の紅葉の名所と言われるところでも、その見ごろが例年よりもかなりずれている様子です。今年もいよいよ残り2ヶ月半となってしまいましたが、コラム読者の皆様方はお変わりなくお過ごしでしょうか？

これだけ朝晩に肌寒さを感じられるようになれば、各社のCMも秋冬を意識したものになっております。先日よりユニクロさんのCMがウールのセーターなどの商品紹介になっていましたが、その中で出演者の皆さんが何故か村上春樹氏の作品を手にしていることに物議を醸しておりました。

私が思うには、このCMが流れる頃にはちょうどノーベル文学賞の発表があり、今年こそはきっと村上春樹氏が受賞するとCM制作会社が予想をしたのではないでしょうか？そのタイミングでこのCMが流れたら、ユニクロさんの先読み力が話題になってCM効果としてはこれ以上のインパクトはないわけです。そうすれば商品の売り上げにも直結するはずというある種の賭けに出てはみたものの、見事に外してしまったのが実情ではないかと推測いたしております。違いますかユニクロさん？

つい先日まではエアリズムで多汗を制御してもらっていたのに、間髪を入れずに今度はヒートテックで暖をとるなんて、今の我が国は1年中休みなくユニクロさんのお世話になるしかないような気候になってしまったみたいです。衣料業界としては全くユニクロさんの一人勝ちでございます。何を隠そう創業者の柳井氏は私の出身高校の先輩にあたるのですが残念ながら一面識もございません（笑）。

そんな衣替え談義はさておいて、イスラエルとパレスチナが大変なことになっております。それでも我が国は藤井聡太君が将棋で8冠とったことの方がトップニュースになる平和ボケ状態は相変わらずのようです。世界の目はウクライナとロシアはそっちのけ状態となり、突然日の当たらなくなったゼレンスキー大統領は再び注目されるようにと何か新たな軍事作戦を仕掛けてきたりするのでしょうか？どちらにしても本当に困ったお話であります。

それが全てとは申しませんが、イスラエルとパレスチナ問題のバックボーンにはユダヤ教とイスラム教という異なる宗教の問題が存在しています。そこで我が国における宗教問題というと、先日岸田政権は近づきつつある衆議院選挙のためなのか、遂に旧統一教会（世界平和統一家庭連合）の解散命令を東京地裁に請求しました。今後の行く末には注目が集まることだと思います。

そもそも宗教なるものは人々の心のよりどころとして、特に辛いときや悲しいときなどに対峙した場合に、1人だけでは解決できないからみんなが寄り添って一緒に苦難を乗り越えましょうといった感じで集うものが母体となっているわけですよね。そしてそこには心を１つにするための“神”だったり“教祖”だったり、といった絶対的に神聖な人が存在していて、その人を頂点として同じ思いの信者さん達が身を委ねることで成立する組織なのだと思います。

我が国の憲法においても「信教の自由」は認められているわけですから、誰がどの宗教に信仰を持とうが、逆に一切信仰を持つまいが、それに関しては憲法が自由であるとしているのです。よって特定の宗教に対して解散命令を出すという事は、厳格かつ慎重な審査は絶対に必要であり、それはそれで命令を出すには本当になかなかハードルの高いお話になるのであります。

その昔から言われる「信じる者は救われる」というフレーズは結果論であり、入信のきっかけの多くは「救われるのなら信じます」が先なのではないでしょうか。その“信じます”の度合いが一般的な『信仰』レベルなのか、『洗脳』レベルなのかで予後が変わってしまうのだと思います。信者さんがほぼ全員洗脳されたような状態では、過去にもオウム真理教なる宗教団体がとんでもない事件を引き起こして、最終的に教祖は死刑になり団体は解散させられました。

とは言え信仰レベルでもその規模が“国対国”ともなると、政治的な要素や人種差や国境の問題なども絡んできてしまい、そこではテロや戦争にまで勃発してしまうわけですから、信仰レベルならまだ大丈夫ですといったような一筋縄ではいかないものであります。人は決して１人だけで生きていくことは出来ず、誰かの、何かの、サポートは必ず必要です。

とはいえどんなに仲良くしていても、時には意見の食い違いや、時にはけんかや争う場面もあるかもしれません。でも最後の最後には、肌の色や話す言葉や信じる神様が違っていても、お互いを理解して、仲良く手を取り合って、金木犀の香りに包まれたような穏やかで平和な世界を皆で続けていけることを願うばかりでございます。

私と同じ年に生まれたジャニーズ事務所が消滅し、この原稿が脱稿された本日の朝には、うちの近所でもちゃんと金木犀の香りが漂っておりました。ところがお昼過ぎには造園業者があっという間にバッサリと剪定をしているではないですかぁぁぁ！！恐らく剪定の予約は随分前に例年通りに金無垢性の花が終わるころにされていたのに、今年はその予約日に満開になってしまったという事なのでしょうね～～～（泣）。