理事長の呟き

〜アンチエイジング医療に邁進する精神科医のひとり言〜

Vol.57

『アウティング』

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コラム読者の皆様にはご心配をおかけいたしましたが、COVID-19の感染からはほぼ回復を致しまして(若干変な咳が残ってはおりますが・・・)、無事に社会復帰を致しておりますのでご安心ください。私の後にも友人や知人がバタバタと感染しておりまして、まだまだ油断は禁物のようですので、コラム読者の皆様方も酷暑共々十分お気を付けください。

皆さんは今回のテーマ『アウティング』という言葉は御存知でしょうか?これはLGBTQ+の人達に於いて、他の人達には公にしていないLGBTQ+の部分を本人の同意なく他の人に言いふらしたり、SNSなどに書き込んで暴露したりすることなのだそうです。先日この件で職場にてアウティングを受けたことが原因で精神疾患を発症したと診断されたケースが、労働基準監督署から労災の認定を受けたとの報道がありました。

恐らくアウティングをされた後に、そのことで不当な差別的な行動や対応を周囲のスタッフから受けるようになってしまい、それが引き金となって何らかの精神症状を認めるようになり、最終的に精神疾患の診断を受けられたのではないかと思われます。先日我が国でもLGBT理解増進法案なるものが本国会にて可決成立となりましたが、その法案の中身においてはまだまだ多くの物議を醸しているようであります。

ここで私思うのですが、相手がLGBTQ+の方であると知っているのと全く知らないでいるのでは、やはりこちら側の対応の仕方(気配り)も変わってしまうものかと。そこでともすればこちらの配慮の足らない言動が、ひいては“モラハラ”とか“セクハラ”と相手側からとらえられてしまう事も起こりうるわけで、知っていたらお互いそのような後々に残る嫌な思いをせずに未然に防げることもあろうかと考えるのですがどうでしょうか?

ですから『アウティング』されたことで悩んだり苦しんだりするのではなく、何の気兼ねもない状況でご自身から先に『カミングアウト』して頂き、それを周囲が偏見なく自然に受け入れることが出来る世の中になれば、このような行き違い的な問題は発生しなくなるわけであります。よって1日も早くLGBTQ+の方々をまずきちんと理解してあげることが重要で、それが出来ていないと偏見や差別が無くなる世の中にはならないと思います。

先日の経産省のトイレにおける使用制限問題で最高裁まで行った裁判も、結局は利用する人がトランスジェンダーであることを皆さんがちゃんと認知して理解できていればこのような論争にまで発展しなかったのではないかと思います。その皆さんの理解を深めてちゃんと認知をできるようにするためのステップとして、今回のLGBT理解増進法案が可決されたものと信じてはおりますが、どうも中身にはまだまだ検討の余地は多々ありそうです。

精神科領域ではLGBTQ+の「T」であるトランスジェンダーを「性同一性障害:GID(Gender Identity Disorder)」という疾患名で扱っておりましたが、近年WHOではこれは“精神疾患”ではなく“健康に関連する状態”として扱うようになりました。ただトランスジェンダーの方には身体的性と性自認の不一致に違和感や嫌悪感を抱いてしまい、外科的な性転換手術を希望されるケースも少なくありません。そこで医者が人様の体にメスを入れて何らかの治療をするとなると、やはりこれは疾患でないとおかしい話ではないか?という論争は今でも残っておりまして、そこもまだ議論の余地ありなのでございます。

そこで更にちょっとややこしくなるお話に「異性装(クロスドレッサー)」というケースもありまして、これはどういう意味かと申しますと「性自認と身体的性は一致しているものの、その性とは異なった服装を身にまとう状態」、つまりベタな言い方をすれば一般で言うところの「男装」とか「女装」がこれになります。ですから結論としてパッと見の外見だけではその人の自認する性は判断できないという事なのでございます。

10年位前にマツコ・デラックスさんが司会をされるテレビ番組に私が出演させて頂くことがありまして、そこで当然何らかの絡みをするうえで収録前にキチンとこの人は「トランスジェンダー」なのか「クロスドレッサー」なのかを確認しなくてはならないと思い、果たしてどのように問えばマツコさんに失礼にならないか必死で考えた挙句に、こう質問することで答えを導きました。

私:「初めまして。本日は番組でご一緒させて頂く精神科医の小林と申します。宜しくお願いします。」

マツコ:「こちらこそよろしくぅぅぅ。」

私:「収録前に一つだけ質問をさせて頂いてもよろしいでしょうか?」

マツコ:「いいわよ~、何でも聞いてちょうだぁぁぁい」

私:「では、私は男性なのですが、マツコさんからみて同性ですか異性ですか?」

マツコ:「あ~~~、同性よぉぉぉ」

私:「了解いたしました!ありがとうございました。では本日宜しくお願い致します。」

という事で“彼”は「トランスジェンダー」なく、「クロスドレッサー」であることは確認できたわけです。ただ「ゲイ」であるのかどうかは問えませんでしたが、マツコさんには少なくとも男同士としての対応をすれば問題ないことが確認できて、何とかその番組を無事に乗り切った経験も今となっては懐かしい思い出でございます。

 

 

その番組収録を社会勉強の一環として当時小学生の娘も見学に来ていたのですが、マツコ氏に挨拶をして一緒に記念撮影をしただけで、番組の内容は小学生の娘に見せることは到底出来ない内容の“オトナ”の深夜番組なのでしたぁぁぁ(笑)

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